Virus-Host Interaction

Ras-PI3Kシグナルを介したインフルエンザウイルス感染

準備中

【関連業績】

  • A peptide derived from phosphoinositide 3-kinase inhibits endocytosis and influenza virus infection. Fujioka Y, Satoh A, Horiuchi K, Fujioka M, Tsutsumi K, Sasaki J, Nepal P, Kashiwagi S, Paudel S, Nishide S, Nanbo A, Sasaki T, & Ohba Y. Cell Struct Funct 44: 61-74, 2019

日本細胞生物学会論文賞

Ca2+シグナルを介したインフルエンザウイルスの宿主細胞侵入機構

多くのウイルスは細胞に侵入する際に細胞が持つエンドサイトーシス機構を利用します。例えばインフルエンザはクラスリン依存性エンドサイトーシスで細胞に侵入すると言われていました。しかし、私たちの研究から、Ras-PI3Kシグナルの活性化を介して、クラスリン非依存性エンドサイトーシスでも侵入可能なことが証明されました。また、その際に細胞内カルシウム濃度の上昇を引き金に、Ras-PI3Kシグナルを活性化することが明らかとなりました(図2)。

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図2 ウイルス感染による細胞内カルシウムイオン濃度の一過性上昇
培養細胞にカルシウムイオン濃度をモニターするFRETセンサーを発現させ、ウイルス感染後のカルシウム動態を生きた細胞で観察した。感染直後に、複数回の細胞内カルシウムイオン濃度の一過的上昇が起こった。

さらに解析を進めると、ウイルスが感染した時に生じるカルシウム濃度上昇をきっかけに、Ras-PI3Kシグナルのみならず様々なシグナルネットワークが発動し、種々のエンドサイトーシスが促進することが分かりました(図3)。

すなわち、インフルエンザウイルスは宿主細胞内カルシウム濃度など、細胞内シグナル伝達機構を乗っ取ることで、細胞内に侵入しやすい環境を作り出しているというモデルが考えられます。本研究のように、ウイルスを用いて細胞の機能を探求することにより、これまでは明らかではなかった細胞に潜むメカニズムの解明が加速するものと期待されます。

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図3 カルシウムシグナルを介したインフルエンザウイルスの侵入機構
インフルエンザウイルスは細胞に吸着するとすぐさま、カルシウム濃度上昇→RhoA活性化→カルシウム濃度上昇というシグナルを発動させ、エンドサイトーシスを亢進することで効率的に細胞に侵入する。

インフルエンザウイルスの宿主受容体の同定

さらに、インフルエンザウイルスが細胞内カルシウム濃度を上昇させるメカニズムを調べたところ、電位依存性カルシウムチャネルが鍵であることが解りました。電位依存性カルシウムチャネルの阻害薬であるカルシウムブロッカーはin vitroだけでなくマウスを用いたin vivoでの系やヒト細胞を用いたex vivoの実験系でも感染抑制効果を示しました。今後の抗インフルエンザ薬開発への展開が期待されます。</p

【関連業績】

  • A Ca2+-dependent signalling circuit regulates influenza A virus internalisation and infection. Fujioka Y, Tsuda M, Nanbo A, Hattori T, Sasaki J, Sasaki T, Miyazaki T & Ohba Y. Nat. Commun. 4: 2763, 2013
  • A Voltage-Dependent Ca2+ Channel Participates in Influenza A Virus Entry into Mammalian Cells. Fujioka Y, Nishide S, Ose T, Suzuki T, Kato I, Fukuhara H, Fujioka M, Horiuchi K, Satoh A, Nepal P, Kashiwagi S, Wang J, Horiguchi M, Sato Y, Paudel S, Nanbo A, Miyazaki T, Hasegawa H, Maenaka K, Ohba Y. Cell Host Microbe 23: 809-818, 2018

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